二次的著作物についての考察―創作者主義を基点として 松村皆希 2018
連載漫画以外の事例において両著作物の創作性が不可分一体となる二次的著作物が存在するのか
そもそも連載漫画のストーリー部分と絵画的表現との創作性は分離可能ではないか
そういう作品もあるだろうけどそうじゃない作品もありそうで厄介そう基素.icon
我が国の著作権法は,翻案に関する2つの条文の解釈について,明瞭なルールを提示しているとは言いがたい。
本稿は,こうした学説の対立を抱える二つの条文の解釈に対し,創作者主義という著作権法の理念をより重視する立場から検討を行い,一定の結論を導くことを目的とするものである。 一方,職務著作物について規定した法15条や映画の著作物について規定した法29条は,創作者以外の者に著作権が帰属すると定めていることから,創作者主義の例外を定めた条文といえる。
よって,そうした例外規定がない以上,翻案や二次的著作物を巡る解釈もまた,創作者主義を基点として判断されるべきであるというのが筆者の主張である
二次的著作物の創作行為を規定した法27条(著作権法27条 翻訳・翻案権)の解釈を巡っては,全体比較論が持つ抽象性に対して批判を加え,原著作物の創作的表現が二次的著作物に利用されていれば,たとえそれが微量であっても翻案権侵害を認めるとする創作的表現説を採用するべきとした。 他人の創作的表現を利用している以上は翻案権等の侵害が認められるべきであり,解釈論による例外は設けるべきではないと考える。翻案権等の侵害は,一度は権利侵害に当たると考えた上で,フェアユースを初めとした権利制限規定の問題として,別個に論じられるべきである 現状日本でフェアユースはないから、こういう考え方を実務ですることはできないよね基素.icon
二次的著作物の創作行為自体は,原著作者に対して不利益を与える可能性は低い...他者の模倣によって新たな作品が創出されることで文化が発展してきた歴史を踏まえるならば,法27条の存在意義については,立法論的な立ち位置から改めて検討されるべきである。 二次的著作物の利用行為を規定した法28条に関連して,二次的著作物における原著作者の権利範囲が,二次的著作物内の自身の創作的表現の存しない部分にまで及ぶとした見解に対して批判を加え,二次的著作物における原著作者の権利範囲は,自身の創作的表現の範囲に限定されるべきだと主張した。
他人の創作的表現を利用している以上は翻案権等の侵害が認められるべきであり,解釈論による例外は設けるべきではないと考える。翻案権等の侵害は,一度は権利侵害に当たると考えた上で,フェアユースを初めとした権利制限規定の問題として,別個に論じられるべきである
〔キャンディ・キャンディ事件〕の判例が,そうした創作性に関する当初の論点を離れ,実原著作者の権利範囲が二次的著作物全体に及ぶことを説示した判例として一般化しつつあることは,大変由々しきことに思われる。
二次的著作物であることを理由に,他人の創作的表現に依拠しなかった独自創作の部分すらも自由に利用できないというのは,創作者主義を蔑ろのものとし,後続のインセンティブを大いに幻滅させる現状にある...